RFIDについてまとめてみる(1)

もうじきブレイクする、と言われ続けて全然ブレイクしないRFIDについて、自分の理解度を高めるためにまとめてみる。

RFID(Radio Frequency IDentificationの略)とはなにか?

まずは定義から。

「JISX0500」による定義
誘導電磁界または電波によって、非接触で半導体メモリのデータを読み出し、書き込みのために、近距離通信を行うものの総称。

http://www.jisc.go.jp/app/pager?id=9487

(社)日本自動認識システム協会(JAISA)における「RFID」の定義
JISX0500の定義を満たし、さらに次の条件を満たすもの
1.携帯容易な大きさであること
2.情報を電子回路に記憶すること
3.非接触通信により交信すること

 簡単に言ってしまえば、「すごいバーコード」のこと。
重要なのはこういった特徴。

  • ユニークなIDを持つ
  • 非接触で読み書きできる(最大で6〜8m)
  • 複数一括読み取りができる

RFIDの種類(周波数による区別)

一般的に、RFIDは周波数で区別することが多い。

ISO18000-2 135kHz以下のRFID

 通信距離は最大数十cm。最も歴史が古い。利用例は回転寿司の精算システムなど。
原理上サイズが大きくならざるを得ないので、他のRFIDに置き換えられていくだろう。

ISO18000-3 13.56MHzのRFID

 通信距離は数十cm〜約1m。現在日本で最も普及しているもの。
この規格に関連するものとして、ISO14443・ISO15693がある。ISO18000は周波数など(エア・インターフェイスという)を定義しているだけだが、この2つはそれ以外を定義している。

 ISO14443はセキュリティが要求される規格で、さらに2種類に分かれている。

  • ISO14443 TYPE-A・・・ICテレホンカードなどで利用されている。
  • ISO14443 TYPE-B・・・住基カード、運転免許証などで利用されている。

SuicaEdyに代表される、FeliCaはTYPE-Cとして提案されていたが実現しなかった。今でもTYPE-Cとして表記されることもある。現在FeliCaの上位互換がISO18092として規格化された。

 ISO15693はユニークIDのメモリ構造を定義していて、セキュリティは要求されない。ISO14443より通信距離が長い。

 RFIDを読み取るための装置をリーダ/ライタ(R/W)というが、選択する場合は対応規格に注意が必要。セキュリティが要求される場合14443 TYPE-AまたはB、18092(FeliCa)対応のR/Wを選択し、セキュリティが不要な場合は15693対応のR/Wを選択すればいいだろう。

ISO18000-4 2.45GHzのRFID

 通信距離は最大約1.5m。最も小型化が可能だけど水に弱く、水の近くにあると通信距離がすごく落ちる。また、無線LANと干渉する可能性がある。指向性が強いので、使い方によってはこれが最適な場合もある。
ただ、ISO規格が整備されていないので、ベンダ独自の規格による囲い込みが激しい。なのでベンダと心中する覚悟が必要。
愛知万博の入場券に使われた「μチップ」はこの周波数帯。

ISO18000-6 UHF帯のRFID

 通信距離は最大約8m。ISO規格ではないが、EPCGlobal Class1 Generation2(通称GEN2)とセットで語られることが多い。5円タグと呼ばれた「響」はGEN2のサブセット。ちなみに響は月産一億個で単価5円が見えてきたというレベルで、あまり現実的ではない。

 最近ニュースで取り上げられるのは、まずこの規格だろう。何故かというと通信距離が最大6〜8mあり、電波法の改正を受けて国内でも最近使えるようになったから。RFID普及のための大本命と見られている。

 じゃあ今後はこれを使えばいいのかというと、そういうわけでもない。飛びすぎることが問題になる場合もある。持主の意思とは関係なく、SuicaEdyが5m先でも反応することを考えれば分かりやすい。その他、干渉問題や医療機器への影響など解決すべき問題がまだまだある。

 最も期待されているだけに、この規格がどうなるかによってRFIDの未来が変わってくるかもしれない。

ISO18000-7 433MHzのRFID

あまりよく知らない。日本では、この周波数帯がアマチュア無線に割り当てられているため、利用できない。


※ ISOの規格について、うまくまとまっているものは見たことがないので、間違えてる可能性あり。

RFIDの種類(原理による区別)

電磁誘導方式

ISO18000-2、ISO18000-3がこれにあたる。
R/Wに接続したアンテナが磁界を作り、RFIDがその磁界から電力を供給してもらう方式。出力が違うだけで、IH調理器と原理的には同じらしい。

電波方式

ISO18000-4、ISO18000-6がこれにあたる。
R/Wに接続したアンテナが電波を送り、RFIDがその電波から電力を供給してもらう方式。水に電波が吸収されるので、水の近くにRFIDがあると通信距離が落ちる。

RFIDの種類(動作による区別)

RFIDがR/Wに応答を返す場合に、どういうきっかけで応答するのか、電力をどこから供給するか、によって分類される。電池のある/なしで区別されることが多いが、そうするとセミアクティブが説明できない。

パッシブ

電池を内蔵しないもので、R/Wから問い合わせがあって初めて応答する。ISO18000シリーズは大体これにあたる。電池を内蔵していないので、ICが壊れない限り使用できる。

アクティブ

電池を内蔵しているもので、R/Wの問い合わせがなくても電波を発信する。周波数は300MHzとか433MHzが使われる。近いうちにUHF帯で使えるように電波法が改正されるらしい。当然のことながら、電池が無くなれば動作しない。
 子供の安全管理システムとか、キーレスエントリー、イモビライザーに使われる。

セミアクティブ

セミパッシブともいわれたりする。電池を内蔵しているが、R/Wから問い合わせがあってから応答する。応答には内蔵している電池の電力を使用する。

非接触ICカードとかICタグとの違いは?

ない。
RFIDはこれらすべてを含む。他にもこんな名前で呼ばれている。

RFID(アールエフアイディー)という名前は言いにくいので、つい「ICタグ」と言うことが多い。

 カードとタグの違いは、単純に形状の違いをさすことが多い。一般的にカードが高価で、タグは安価。
決定的に違うのは、カードタイプのものはCPUを積むものもあるということ(住基カードとか)。

なぜ普及しないのか?

 最初に夢を見させすぎたから、だと個人的には思う。

 RFIDといえば、「バーコードを置き換えるものです」という説明をされることが多い。この説明はすごい分かりやすいんだけども、同時にかなりの誤解を招いている。まだそこで止めておけば良かったのかもしれないけど、さらにバーコードではできないこともできる、といったのがまずかった。

 特に、コンビニの商品すべてにRFIDをつけてカゴの中の商品をスキャンすれば一括精算できます、というやつ。

 RFIDに関わらず、あるものがあることを証明するのは簡単だけど、ないものがないことを証明するのは不可能だ。上記の一括精算では、読み取り漏れがないことを証明することができないので、実用化はされないだろう。実験なら読み取り漏れがあっても問題ないが、実務では大問題だ。じゃあ1個ずつ読ませれば?と思うかもしれないが、それならバーコードで十分だ。

 そんなわけで、理想像を見せられて導入を検討したら、現実が付いてきてないから失望したってとこが多いんだろう。期待が大きいだけに失望もでかいわけで。

 あと、価格がこなれていないため、初期費用が莫大にかかるのも大きい。活用が期待されている物流分野を考えてみれば分かりやすいかな。UHFのR/Wなら50万は下らないだろうから、それを複数設置して、さらに制御するPCなり端末を設置する必要がある。
 さらにRFIDが単価10円としても、実際は何らかの加工(ラベル加工とか)が必要になってくる。これをすべての商品に貼り付けることを考えると気が重くなる。バーコードならタダなのにだ。
 ちょっとした倉庫なら、RFIDとハードウェアだけで1億とか簡単に越えそうだ。日本は、バーコードによる物流システムをかなりの精度で構築してるから、アメリカみたいにシュリンケージの被害の防止を訴えることもできない。

 さらに言えば、ハードウェアがでかすぎる。RFIDを読むためには、R/W・アンテナ・R/Wの制御端末が必要だ。これらを持って移動するのはあり得ない。最近はそれらを一体化したものもあるが、かなりでかい。ひどいものだと1kg近くある。バーコードターミナルならちょっとでかいリモコン程度。かといって小型化すると通信距離が稼げないので、「それバーコードでいいんじゃないの?」という顧客を説得できない。


 なんか書けば書くほど普及しそうにないな・・・ほかにもいろいろあるけど、またそのうち書く。